ドラマ【短編小説】空をつくる手 朝六時の空は、まだ鈍く灰色に濁っていた。都市再開発の中心部、建設中の超高層ビルの現場では、すでにクレーンが唸り、鉄骨が空を切っていた。その足元、ヘルメットと作業着に身を包んだ青年が、深呼吸ひとつして足を踏み出す。 2025.05.17ドラマ
ミステリー【短編小説】最後のスケッチ 放課後の美術室には、絵具の匂いと静けさが満ちていた。高校二年の遥香は、今、美術部の卒業制作に取り組んでいた。題材は、学校の裏手に残る旧校舎。今では使われておらず、生徒の出入りも禁止されているが、取り壊しが決まったと聞いて、彼女は“最後の記録”としてスケッチを描くことにした。 2025.05.16ミステリー
日常【短編小説】日向の縁側 春休みの初日、ユイは祖母の家の縁側に座っていた。母に「たまには空気の違う場所でのんびりしてきなさい」と言われて、渋々やってきた田舎町。スマホの電波も不安定で、友... 2025.05.15日常
ミステリー【短編小説】手紙には書かれていない 春の引っ越しを目前に控えたある日、菜月の家に一通の古びた手紙が届いた。封筒は黄ばんでおり、消印はかすれて読めない。だが、差出人欄には何も書かれておらず、宛先だけ... 2025.05.14ミステリー
ファンタジー【短編小説】流れ星の滝へ 夜空を見上げるたび、リクトは妹の咲のことを思い出す。彼女は、生まれつき体が弱かった。病院のベッドで過ごす日々の中でも、咲はいつも空を見ていた。「流れ星を見たら、... 2025.05.13ファンタジー
ドラマ【短編小説】土の声を聞く日 春のはじめ、山村の風はまだ冷たかった。過疎化が進み、人影もまばらなこの村で、浩一はただひとり畑を耕し続けていた。かつては祖父と共に働いた土。祖父が亡くなってから... 2025.05.12ドラマ
ミステリー【短編小説】昼寝部屋の罠 哲が「昼寝部屋」の存在を知ったのは、五月の蒸し暑い午後だった。大学の講義と課題に追われ、眠気に負けて図書館の隅でうとうとしていたとき、同じゼミの吉田がこっそり教... 2025.05.10ミステリー
ファンタジー【短編小説】水溜まりの向こう側 雨が止んだばかりの朝、通学路にはいくつもの水溜まりができていた。小学五年生の理央は、いつものようにランドセルを背負い、跳ねるように水たまりを避けながら歩いていた... 2025.05.09ファンタジー
恋愛【短編小説】傘越しの告白 雨が降ると、紗季は決まって遠回りして帰った。駅前のロータリー、古い本屋の前に立つ無口な青年に会うためだ。彼はいつも、駅から出てきた人にそっと傘を差し出していた。... 2025.05.08恋愛
ファンタジー【短編小説】湖の底の図書館 ナナが祖母の住む村にやって来たのは、夏休みが始まったばかりの頃だった。両親の仕事の都合で毎年預けられるこの場所は、山と田んぼと静かな時間しかない退屈な田舎に思え... 2025.05.07ファンタジー