SF【短編小説】幸福配送サービス 日曜の朝、窓際のテーブルに置かれていたのは、見覚えのない黒い端末だった。名刺ほどの大きさで、表面にはただひとつ「幸福配送サービス」とだけ書かれている。 2025.05.30SF
ドラマ【短編小説】夏空の下で、君と セミの声が空を震わせるように響いていた。高校三年の夏、圭は野球部を引退したばかりだった。甲子園出場は果たせなかったけれど、ベンチで仲間と見上げたあの空は、たしかに忘れられない眩しさを持っていた。 2025.05.29ドラマ
ドラマ【短編小説】星降るベランダで 遥がベランダで星を眺めるようになったのは、小説家を目指すようになってからだった。夜の空は、物語を考えるための静かなページだった。仕事から帰ってきて、インスタントのコーヒーを片手に、ノートを膝にのせて星を見上げる。それが、彼女の小さな習慣だった。 2025.05.28ドラマ
SF【短編小説】屋上ノイズ 築50年の古いマンション「ミナト荘」。その最上階で、夜な夜な不可解な“音”が鳴るという噂があった。それは、午前2時ちょうどになると屋上から発せられる微弱な電磁ノイズ。近隣住民のテレビやラジオが一瞬だけ乱れ、誰もいない屋上から「ビー…ビー…ピィ……」という不規則な電子音が聞こえる。 2025.05.27SF
ファンタジー【短編小説】泡の国のティア ある夏の午後、ミナは庭でシャボン玉を吹いていた。光に透ける泡が空に舞い、風に乗ってくるくると踊る。ひとつ、ふたつ、と数えていくうちに、ミナは目を見張った。 2025.05.26ファンタジー
ファンタジー【短編小説】忘却の果実 旅人リオは、その日も異国の陽射しを浴びて、砂と香辛料の匂いが入り混じる市場を歩いていた。色とりどりの布、陽気な音楽、行き交う声。遠く地中海の風が吹き込むこの町には、世界のどこにもない雑多な魅力があった。 2025.05.23ファンタジー
ミステリー【短編小説】氷上の記憶 風が止み、雪が舞い落ちる湖面は、まるで静寂そのものだった。冬の朝、町外れの凍った湖で、ひとりの少年が湖底に何かを見つけた。それは、半透明の氷の中に閉じ込められた、片方だけの古いスケート靴だった。 2025.05.22ミステリー
SF【短編小説】時の郵便屋 春の午後、高校生の奏のもとに、奇妙な手紙が届いた。宛名は自分。差出人不明。封筒は薄く色褪せていて、まるで長い時間を旅してきたようだった。だが、何よりおかしいのは、消印の日付だった。 2025.05.21SF
恋愛【短編小説】波間に手紙を添えて カーフェリーの甲板には、潮風が優しく吹いていた。夏の終わり、大学生の蓮は久しぶりに故郷の島へ帰る途中だった。東京の喧騒から離れて、わずか三時間の船旅。白い波と青空を眺めていると、胸の奥がじんわりとほどけていく気がした。 2025.05.20恋愛
ファンタジー【短編小説】星橋を渡る夜 七夕の夜、少女・ナギは一人、神社裏の小さな丘で天の川を見上げていた。笹飾りもない短冊もない七月の風景に、願いごとを託す気にもなれずにいた彼女は、どこか空虚な気持ちで空を見つめていた。 2025.05.19ファンタジー