ドラマ【短編小説】向日葵の名前 夏の空はどこまでも高く、蒼く、まぶしかった。祖父の葬儀が終わり、陽太は久しぶりに帰郷した実家の縁側に腰を下ろしていた。蝉の声が、まるで時間を巻き戻すように遠くから響く。 2025.06.13ドラマ
ミステリー【短編小説】消えた登山道 夏の終わり、「黒雲山」で登山客の失踪が相次いでいると聞いた記者・志帆は、背筋を張りながら単独で山に入った。地元では「山に呼ばれた者は帰れない」とささやかれているが、それでも彼女の好奇心は止まらなかった。 2025.06.12ミステリー
日常【短編小説】今日のごはんは、なんにする? 朝の光がレースのカーテンをすり抜け、キッチンにやさしく降り注ぐ。真理は小さく伸びをしながら、炊飯器のふたを開けた。「んー、今日もいい匂い」隣の椅子では、3歳の息子・光が、お気に入りのスプーンをにぎりしめて座っている。 2025.06.10日常
ファンタジー【短編小説】糸あやつりの国 廃墟のような人形劇場は、町外れの丘の上にぽつりと残っていた。古びた木の看板には、かろうじて「アルカ劇場」と読める文字。風に吹かれて軋むその音は、まるで誰かが幕を引く音のようだった。 2025.06.09ファンタジー
ドラマ【短編小説】赤い星の下で 砂嵐の向こう、赤く沈む太陽が遺跡の影を長く伸ばしていた。カイはその風景を、まるで何度も見た夢のように黙って見つめていた。ベテランのトレジャーハンターとして、彼は世界中の失われた遺物を追い求めてきた。 2025.06.06ドラマ
日常【短編小説】月曜日のカレーライス 月曜の夕方、遥の部屋には決まってカレーの香りが漂う。一人暮らしを始めて半年。大学の近くにある、風呂トイレ別・築15年のアパートが、彼の「新しい家」になった。 2025.06.05日常
恋愛【短編小説】君の空に溶けて 空港の滑走路が見える小さな町で、陸は毎朝、空を見上げていた。通学路の途中にある丘の上。そこに立つと、ちょうど空港から飛び立つ飛行機が真上を通る。そのたびに、青空に白く長い飛行機雲が引かれる。 2025.06.04恋愛
ミステリー【短編小説】深海の記名帳 深海2000メートル、光も届かぬ海底に、静かに横たわっていたのは、沈没船「サイレント・リリー」だった。発見されたのは偶然だった。日本海溝付近での無人探査の最中、ソナーが不自然な反射を検知したのがきっかけだった。 2025.06.03ミステリー
ドラマ【短編小説】白亜の手紙 標高二千メートルを超える山奥、霧が谷を包む中、若手古生物学者の楓はスコップを握りしめていた。「ここで白亜紀の層が見つかるなんて……」大学の調査チームの一員として、楓は恐竜時代の地層を調べていた。数日前の豪雨によって露出した地層には、異常なまでに保存状態の良い化石がいくつも見つかっていた。 2025.06.02ドラマ